2012-01-01から1年間の記事一覧

my favorite songs 007:驚

今回も強い言葉、『驚』が題です。 美しいものを『美しい』と表現しても短歌にならない以上に、驚きをそのまま『驚いた』などといってしまったら、あっというまにダサダサ。これも難しい題でした。 自作月だけは見えると歌う盲人の話を驚きもせずに聞く土俗…

my favorite songs 006:時代

『時代』。意味の強い題はその言葉自体に振り回されます。題読みの難しさを痛感させられました。 中島みゆきが鳴りっぱなしです。自作低温の時代に僕ら飽食し終齢幼虫ははりさけていく脱皮して巨大化していく蝶の幼虫に、日々の不満を抱きながらも即時的な欲…

my favorite songs 005:点

五題目は『点』 句切る『点』、繋ぐ『点』。『点灯』された『点』の光は『点滅』しつつ消えていく。 多義性のある文字だけに、皆さんいろんな使い方をされて面白い御題でした。 『点描』として使った方が多かったのは意外でした。 自作あおあおき空よ東に上…

my favorite songs 004:果

四つ目は「果」です。 果物の「果」であり、最果ての「果」でもあります。 様々な寓意を込め易く、エロスの発端ともなる語句であるため、面白い歌がたくさん詠まれたように思いました。 自作 双の手に薄き果集め山羊飼いは山羊飼いとして草原に佇つモンゴル…

my favorite songs 003:散

三題目は「散」 散りゆく花のイメージは詩情を呼び起こしやすいが、そのぶんありきたりなテンプレート感もつきまとう。 変化球では「散歩」「散髪」「龍角散」と球を散らしてきた方もありました。自作 くりかえすただくり返すこととしてチル散るミチル海もサ…

my favorite songs 002:隣

「隣」。 いつもかたわらに居る大切な人、あるいは近くて遠い謎の存在。 隣町、隣国、隣の星と離れた場所をあらわすのに使ったり、時間的な隣接をあらわしたりと、皆さんいろんな使い方をしています。自作 南風つよい晩には隣からもれ聴こえくる atar a la r…

my favorite songs 001:今

もっぱら私ありくしの個人的な好みで勝手に一題につき七首選歌させて頂きます。 短歌を始めて二年目の未熟者の所業ゆえ、ご不満などもあるかと思いますが、ご勘弁くださいませ。最初の題は「今」。 いきなり難しい題ですね。 「いつ」「だれが」「どこで」「…

題詠ブログ2012 鑑賞モード突入予定

少しずつになるかとは思いますが、ぼちぼち皆さんの作品を鑑賞しながら反省会などを始めようと思っています。 どういう形でやるかは未定です。

題詠ブログ2012 まとめ

【001:今】刈萱も悲し今手に償いの靴にて舞いしなかも焼かるか(回文) 【002:隣】南風つよい晩には隣からもれ聴こえくる atar a la rata[鼠捕り歌] 【003:散】くりかえすただくり返すこととしてチル散るミチル海もサクラも 【004:果】双の手に薄き果集…

完走報告(ありくし)

完走しました。楽しかったです!! 思ったほど回せませんでしたが、何首かは回文で。 あらためて、皆様の歌を鑑賞させていただきます。

100:先(ありくし)

この先はあらゆるものが透明でむろん猫らもとうめいでしたよ

099:趣(ありくし)

憂寂の午にはひるの趣が ぬるい芒果一口喰らう

098:激(ありくし)

ところにより一時激しく降るでしょう例えばそれが愛であっても

097:尾(ありくし)

ひいやりとした下半身たぶらかすかつて尾びれが震えたあたり

096:拭(ありくし)

はらからと横たふゲヘナ遠ざかる音に隠れて口元拭ふ

095:樹(ありくし)

ハルニレの樹には涙をやるがいい祖母によく似た声に告げられ

094:担(ありくし)

薄暮亭何色の夢吐息つき糸目ゆ呪い担いてぼくは (はくぼていなにいろのゆめといきつきいとめゆのろいにないてぼくは)

093:条件(ありくし)

いくたりの花持つひとの連なりて条件反射としてふりかえる

092:童(ありくし)

気がつけば童話のような森に居りもう一度閉じたほうがよさそう

091:締(ありくし)

靴下を脱いで乳房を踏み締める少し異なる感触のする

090:舌(ありくし)

たよりない舌先だけの記憶しか残っていない 小匣を閉じる

089:喪(ありくし)

むごいほど底無し色の喪失よ五月の空の五月の傷の

088:訂(ありくし)

おもむろに訂正された顔をして斜め後に跳んだ蛙よ

087:チャンス(ありくし)

チャンスにはピンチヒッター出てきますピンチのときはベンチにいます

086:片(ありくし)

片腕がピーピー豆に絡まって立ち上がれない土へ還ろう

085:甲(ありくし)

銀傘の下は高いぞ甲子園ライトスタンド中段から見る

084:西洋(ありくし)

たよりない男の息吹西洋化食い止めんとて綿毛吹く吾は

083:邪(ありくし)

邪な左目を閉じ火加減を見る煮卵の火加減をみる

082:苔(ありくし)

二年ほど塔を昇りつづけてる螺旋の床は苔むしてくる

081:秋(ありくし)

哀しみの結露秋雨前線はまだ染めやらぬ紅葉より出づ