2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

091:覧(有櫛由之)

秋の花(紫色)の一覧の山辣韮に泡盛にほふ

090:布(有櫛由之)

暮れ際の布袋葵をつっついて期待の意味を思ひだしてゐる

089:煽(有櫛由之)

飴色の風に煽られ一面にねこじゃらし柔らかき背中よ

088:七(有櫛由之)

夏空に赤き人魚を食みしより七百九十九年 かなしい

087:故意(有櫛由之)

これはもう故意なのでせうまた駅であなたがかすか微笑んでゐる

086:魅(有櫛由之)

ゆふづくよ暁闇に鬼魅とゐてやさしき嘘をささやいて吐く

085:遙(有櫛由之)

銀漢やそらみつ大和遙かなる大地を駆け掬ふ大飛球

084:皇(有櫛由之)

皇帝ペンギン飼育係の定年に月見草一鉢が青みて

083:射(有櫛由之)

茜さすマット・マートン射干玉のゴメス並びて颪衝くかも

082:チェック(有櫛由之)

トラベラーズチェックって何アフリカの白地図をくり返しなぞりて

081:網(有櫛由之)

地図買ひにゆけば北風とよもして天網の目に水青ゆらぐ

080:議(有櫛由之)

またせたね、黄色い風が不可思議の種をどこかの国へ運ぶよ

079:絶対(有櫛由之)

あれ何処へいつたでせうか絶対に開けてはならぬ箱でしたけど

078:棚(有櫛由之)

秋の日の剝いた甘さの葡萄棚くぐる透羽蛾ひとに知らるな (透羽蛾:すかしば)

077:聡(有櫛由之)

天の窓越え美しき大麒麟 生きるものみな目聡くあれよ

076:ほのか(有櫛由之)

かなしびといふ火のありてししむらにさすうす緑ほのかほのかに

075:盆(有櫛由之)

ほつほつとともし火消えて地蔵盆の子らの声こゑあはく残りき

074:焼(有櫛由之)

アルコールランプの蒼き火もて焼く栄螺に泡はふつふつと来つ