2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

019:妹(有櫛由之)

メドゥサはいちばん妹かなしみとあいの違ひがわからなかつたの

018:援(有櫛由之)

(お姉さま援からないね)北を指すなかば乾いた旅人の跡

017:サービス(有櫛由之)

玻璃色のキョムの追加はサービスで知らない森の獺料理店 (獺:うそ)

016:捜(有櫛由之)

ふるゆきの白痴少女は毒花を捜せよとこふ夏の蔭濃し (少女:をとめ)

015:艶(有櫛由之)

廃天使憂ひの頬に照り返る凌霄花にわづか艶めく

014:壇(有櫛由之)

廃校に種を散らして鳳仙花花壇のことは忘れてしまふよ

013:実(有櫛由之)

物語。くるった種をはらむ実を懐かしむほど花赤く咲く

012:延(有櫛由之)

延延とばかげた話するだらうぼくら歪んだシリウスの眼で

011:錆(有櫛由之)

あけなづむ藍錆色を背に月をほろびの女王として慕ひたり (女王:わう)

010:倒(有櫛由之)

なつかしい土に倒れてハルジオンその朧なるべにをよすがに

009:いずれ(有櫛由之)

ふゆに濡れいづれの世にかそばにゐたひととも思ふ朝のあをさぎ

008:原(有櫛由之)

還りこぬ赤きベスパの原形を奪ひつくして花アーモンド

007:快(有櫛由之)

冬蝶の屍はゆきなづむ不愉快な腕は川に沈めてあげる (屍:し 腕:かひな)

006:員(有櫛由之)

さみどりに澪ひく波を寂しみぬ 古甲板員みたび娶りき

005:返事(有櫛由之)

かすれつつ返事は絶えて残さるる花の名と青臭き口臭

004:瓶(有櫛由之)

けぶりたるモロゾフ瓶に一茎の水仙とドン・チェリーの短筒

003:育(有櫛由之)

身のうちに琉金ひとつ育める乙女かつての春を超ゆらむ

002:飲(有櫛由之)

酸は淡く春風にひそみ飲食もしづけきひとのはなむけとなす (酸:す 飲食:おんじき)

001:咲(有櫛由之)

散り際の火こそくれなゐ咲み昏い汝に夭折兆さざりしも (咲:ゑ 汝:なれ)