題詠ブログ2015 まとめ

001:呼 この名ではもう呼ばれはしないだらうゆつくり鎖す釦式ドア
002:急 山の端はやがて明けゆく急がねばならない理由が思ひだせない
003:要 レグルスをとり戻すのに重要なものを汀に落しちやつたし
004:栄 店長の上着のあらゆるポケツトに栄螺の蓋を入れて辞職す
005:中心 中に蛸入つてゐます関西を中心に食べられてゐる(美味)
006:婦 里芋やなんきんなどと炊かれます主に婦人に好まれてゐる
007:度 刺されると激しく痛む二度目だと稀に命にかかはることも
008:ジャム 梅などに似た実を付ける生食も可能であるがジャムにして美味
009:異 九月頃犬の尾に似た花をつけ猫はこの穂を異常に好む
010:玉 肉類を多くのスパイスで煮込む料理。必ず玉ねぎは入れる
011:怪 魚とは思へぬ怪しい姿であるが鰭まで食べられて美味
012:おろか 知恵などが足らずおろかな事。公の場では使はない方がよい
013:刊 毎朝夕刊行されてをり記事は事実であるとみなされてゐる
014:込 ここでない何処かの事。「込み入つた話はどうか――でしてくれ」
015:衛 八兵衛ほか二名を連れて旅をしたと云はれているが史実ではない
016:荒 大荒れの天気となるが中心は無風。無性に張り切る人も
017:画面 行先を教へてくれる車載機器。画面に見入ることは避けたい
018:救 火事を消すための自動車。救急車、ショベルと並び子供に人気
019:靴 足裏に刃のある靴を装着し氷上を滑る野蛮な行為
020:亜 白亜紀ジュラ紀に栄え滅びたが子供たちには人気が残る

021:小 をさな子の小さき爪のさくらばな風は散らすよ風よ散らすな
022:砕 沖つ辺の砕波の白を縫ふ如く風遊びする鷗いとしも
023:柱 円柱形(エンチューケー!)と歌ひつつ新神戸トンネルにのまれる
024:真 瓶詰となり鮮らけき酢のすみれ真青なるものをのこを殺む
025:さらさら 春旱 船出の澪の細細にさらさら崩ゆる果てし思ほゆ  細細:ほそほそ
026:湿 碕といふ土地に生まれし汝が髪の先はかすかに湿りたりけり
027:ダウン デタントもスローダウンの初夏の熟寝の間にも梅は熟れつつ  熟寝:うまい
028:改 さきのよの火付盗賊改が幽かに兆すますらをの眉
029:尺 尺蠖は伸びつつ吾は蹲みつつ五月 愁ひをうらがへしけり
030:物 五月雨に脆弱性は兆しけり矢庭に植物図鑑伏せむ
031:認 おまへより大きく剥けたゆで卵の殻だ認めるだらう、おとうと
032:昏 五月闇わづかに昏きほほゑみに何処より匂ふ栗花かなしき  栗花:りつくわ
033:逸 つまり懦夫ひとりに予報されざりし雨は逸れずに降りたらむとよ
034:前 草矢手に少年一騎駆けの夢前川に菜の花の黄揺る  夢前川:ゆめさきがわ
035:液 ゆるゆると液化してゆく鰐の背のやうにゆくりなく耀ふ比喩
036:バス 細道はきりぎしに沿ひて見送りしバスは岬を出でつ隠れつ
037:療 療養の鯉は痛まし暮れかかる水面をはつか乱すあめんぼ
038:読 葩をふふみて唇を読みあつて長い名前の虫をかぞへて
039:せっかく 陽あたりにせっかく咲いた芍薬を剪る六月の水の昏さよ
040:清 岩肌の玄を湛へて真清水のたまゆら震ひ彌勒めくかも

041:扇 今日は左手の薬指で中の強さの扇風機を止めました
042:特 さ乱れに黝き形なす特牛ゆめの彼岸に歩み止めたり  特牛:ことひうし
043:旧 こひこくとふ郷土料理を待ちわびて旧街道の鄙の家に雨
044:らくだ われらは夏の何の比喩はや月光のらくだの瞼ゆるやかに閉づ
045:売 渓のそら龍のかたちに夕焼けて螢子売りの皺かげりたり  渓:たに
046:貨 奇貨居きて十歳経にけり枇杷好きの喇叭奏者をまたも騙しつ  十歳:ととせ
047:四国 中央と名乗つたばかりに四国中敵に廻した。特産は紙
048:負 名にし負ふ喜連瓜破の早指しの棋士早川のあをき髭面
049:尼 絶えむとやおほわたつみに比丘尼魚の桃色透けてふかきかなしみ  比丘尼魚:びくにん
050:答 かぶとむし右手に持って応答せよ応答せよと夏の子が過ぐ
051:緯 たぎつ瀬の水無月青葉緯糸にさして貴様と刺し違へたり
052:サイト 細き喉嗄れんばかりに鳴き下ろすチイサイトリのユメの大空
053:腐 ユリノキの木下闇より黝揚羽たちて幽かに腐臭のにほふ
054:踵 夏椿われの踵を掠めたる音なむ遠き夢に聞きつる
055:夫 晴天に爪立つ煙突掃除夫の片頬笑ひ 月に倦むべし
056:リボン 萍やなほも数へて浅葱色のリボンを凪の浅瀬に流す
057:析 推薦附避妊具譲り受けてより夢分析のカルテに伏字
058:士 ゆきずりに歌の一首も詠みすてて天色映す潜水士の眼
059:税 篝火や弟待雪に散りまがふ夜半の大石主税笑ひき
060:孔雀 あけぼのに霞む儚きいなづまの光映して白孔雀かな

061:宗 ひたぶるに散り花拾ふ中年の邪宗の僧の手こそ白けれ
062:万年 蟲に近きゆゑに子供の手と脚は細し六千万年の夏
063:丁 沈丁花あるかなきかの風につれ切れ切れ匂ふあかときのきみ
064:裕 霧雨は誰に知られず降るのでせう余裕のない真夜中のダム湖
065:スロー 夜の空裂けて樹冠の白月のスローロリスや吾瞠きつ
066:缶 缶のままに桃喰ひあつてその指を午ちかき日に翳す まくなぎ
067:府 ぬばたまの冥府つらつら梯子せりしばしば翳る青きほほもて
068:煌 煌煌と口に糸引く血の紅を見誤りたり黄昏の雷  黄昏:くわうこん
069:銅 赤銅の器にそそぐ乳の白あはれ幼き母の虫好き
070:本 篝火の明るみ昏む本陣にきりぎりす鳴くほどの綻び
071:粉 黒蝶の鱗粉ほほに光らせて帰り支度の墓参のをとこ
072:諸 諸共に渇く夏野の大向日葵あるいはともに死にしもののふ
073:会場 物部はもののふの謂ひ海月為す宴会場を彷徨ふ給仕
074:唾 食卓に唾で描きつつ哀しめり如何なる星座にも行けぬこと
075:短 あさがほの短日植物てふ性をはつか愛せり宿酔の午
076:舎 キリン舎の高窓越しにゆふべ見し夢のはなしを語りあふべし
077:等 しらしらと此の世に浮かぶやはらかき歌よわれらに降れよ等しく
078:ソース 小鳥には鳥用の神しづか夜にふつふつ煮込む木苺のソース
079:筆 さはれなほ筆跡をまねつつ惑ふわが純情をはげしくほふれ
080:標 紫の葡萄啄む唇のまま標野迷ひてきみこふる歌

081:付 老犬の幼き頃を思ひ出づ はた付けざりし名を思ひ出づ
082:佳 佳月涼風あらずとも来よ雨の音の土にしみゆくほどに酔はむよ
083:憎 憎しみもやがては土へかへること山杜鵑草つゆをたたへつ
084:錦 ユニフォーム少女の群は声高くゆがみ錦の川ぞ流るる
085:化石 翼あるものの化石の冷えゆくに秋うれひこそひとを殺むれ
086:珠 月光の擬宝珠を撫づ智慧熱の子の青黒き眼を畏れつつ
087:当 ラグビーの貴奴当千にして巻き毛しばしば翳る愁ひとは沖
088:炭 月の夜に温みゆく炭酸水やバー・パンサラッサの某暇日
089:マーク 逢ひたしと言へば世界は傾いてブックマークの紅葉落ちけむ
090:山 苦々しく胡桃噛みつつ仇敵の忌にぞ山茶花は咲き初めけむ
091:略 計略のラガーマンこそ愛しけれあした木枯らし鬢にぞ吹く  鬢:もみあげ
092:徴 うろくづに怒りの徴ちりつどふ 寧ろ悲しみこそわれに降れ
093:わざわざ 鄙の湯にわざわざバスを乗り継いでその日に帰るやうな恋だな
094:腹 地下茎はあるといふね隣人の光合成に空腹は満つ
095:申 三申の言はざる日こそ哀しけれ戦後戦前縄のごとしも
096:賢 賢弟愚兄愚父母愚姉妹うちそろひ雨中に紅葉見てしをとつひ
097:騙 名にし負はばいざ謀らむやむらさきの草より出づる塵虫騙  塵虫騙:ゴミムシダマシ
098:独 わかくさの青葉独身寮退去期限せまれりされど益荒男
099:聴 弟月の朔夜に刻は滞り針の震へる音を聴きけり
100:願 われらみなつたなくつなぐ文字の緒にきれぎれ光る夜を願ふも