2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧
輪郭が薄まっていく舟に乗り思い出せないプレゼントあげる
桜貝ひとつさざめくさみしさの単位でかぞえうらんでおくれ
バファリンと一緒に飲んだ水たちのかつて涙であった可能性
晴れる紐、雨の降る紐あるだろう 目を閉じてゆっくりと引いてみる
「どっちかっていうと晩ごはんだよね」赤信号待ちながらキミは
単線を春の過客は行くだろう明日はきっと帰るであろう
鉱物はたちまち熔けよ あかねさす玄武岩[バサルト]流る土地は怒りて
ゆるゆるとマリアナ海溝沈みゆくチョウチンアンコウの渋面を見つ
ながいこと世話になったと海に降る雨ならやがてヒトデとなりぬ
たとうればあやうい青のまなざしに囲まれ、それが蛙のようで
鰓呼吸を活かし潜るは波女 春雲、視界追う雪、子らへ えらこきゅうをいかしもぐるはなみおみなはるぐもしかいおうゆきこらへ
柔らかい蛹をそっと敷きつめてとおい、遠い声を待ちます
石化した月の光に謎めきて嘴濡らす高枝のヒト
ふるさとに今朝降ることにした雨のためらいこごえ雪とうつろう
ぼくのさいは普通の犀より小さくてでもいぬよりはずっとおおきい
血はめぐるただ千年の罰として 赤き桜桃また一つ熟れる
三年に一度途方もない嘘をつくドライアイスかじる福田は
夜の海あと幾千の輝きが残っているか仮定してみて
風の歌が得意な姉は音の無い稲妻聞いて飛び出したまま
寒風の喫煙席に身を沈め「愛でたばこはやめられません」
「蕎麦打ちの勉強」とだけ残したる十年ぶりの父 今朝帰る
天高くラグビーボール蹴り上げてそのまま消えていく鰯雲
お互いに鰓少しずつ食いあって淡水魚的対処法だね
約束の牙をあげよう たよりないおもいでとして紙につつんで
神す代の右にもおはす民の名の乱すは面にきみの寄す身か かみすよのみぎにもおはすたみのなのみだすはおもにきみのよすみか
むしろ悲しき春の嵐に耳を立て輪郭にじむ路地の黒猫
南方で聞きし目白の囀りは澱のましろき悔いを騒がす
「こんにちは魚屋ですか」滝壷です「ごめんまちがい」多分へいき
カラフルを詰め込んでいく空箱がざわつきだした瞬間に春
子供にはなりきれなかった大人らの寓話という寓話をあつめて