2014-01-01から1年間の記事一覧
(001:咲) 散り際の火こそくれなゐ咲み昏い汝に夭折兆さざりしも (咲:ゑ 汝:なれ) (002:飲) 酸は淡く春風にひそみ飲食もしづけきひとのはなむけとなす (酸:す 飲食:おんじき) (003:育) 身のうちに琉金ひとつ育める乙女かつての春を超ゆらむ …
なんとか完走しました。ありがとうございました。 今年は詠めない題が多く苦労しました。
臘月の最後の一人として朝を小窓拭きつつ迎へてゐます
この空が観測気球の沈降をかよはき電波もて語りあふ
団栗が額にあたるは吉兆と思ひましたが違ひましたか
冬凪のにぶき光のかぎろへるみぎはを山陽電車揺れゆく
虚空へと無地の黒旗翻り身を裂くほどに鵙猛るはも
波際に指輪を放ち丁寧に運命線の縺れをほどく
朝な朝な皺皺の手に雇はれてにぼしの頭享くる日溜まり
思ひ出にしたたったのは誰の水嘘の印を幾つも残す
まちがって今朝買ってきたカブトムシ勝手に標本にしやがって
秋の花(紫色)の一覧の山辣韮に泡盛にほふ
暮れ際の布袋葵をつっついて期待の意味を思ひだしてゐる
飴色の風に煽られ一面にねこじゃらし柔らかき背中よ
夏空に赤き人魚を食みしより七百九十九年 かなしい
これはもう故意なのでせうまた駅であなたがかすか微笑んでゐる
ゆふづくよ暁闇に鬼魅とゐてやさしき嘘をささやいて吐く
銀漢やそらみつ大和遙かなる大地を駆け掬ふ大飛球
皇帝ペンギン飼育係の定年に月見草一鉢が青みて
茜さすマット・マートン射干玉のゴメス並びて颪衝くかも
トラベラーズチェックって何アフリカの白地図をくり返しなぞりて
地図買ひにゆけば北風とよもして天網の目に水青ゆらぐ
またせたね、黄色い風が不可思議の種をどこかの国へ運ぶよ
あれ何処へいつたでせうか絶対に開けてはならぬ箱でしたけど
秋の日の剝いた甘さの葡萄棚くぐる透羽蛾ひとに知らるな (透羽蛾:すかしば)
天の窓越え美しき大麒麟 生きるものみな目聡くあれよ
かなしびといふ火のありてししむらにさすうす緑ほのかほのかに
ほつほつとともし火消えて地蔵盆の子らの声こゑあはく残りき
アルコールランプの蒼き火もて焼く栄螺に泡はふつふつと来つ
谷渡る鶯の音に驚きてうつつに戻る霧の白峰