2012-01-01から1年間の記事一覧
西の雲疾き朝にはたわむれに数歩踏み入る蜘蛛の領域
草帯を解きつ匂えよ處女らは膝寄せあって摘まるる不穏
深海を探査するため深海に潜るしんかい6500
苔石の転がりてまた十年の坂道登るときの鼻歌
金のでも銀のでもなく桃色の桃と答えて桃をもらった
流氷が潮に痩せゆきその上のペンギンも半ば溶けかけている
生きのびることに無精な獣らは流氷の上瞳孔も透く
異常乾燥注意報の無人島で火薬庫ひとつかかえてくらす
縁取りの狭き畦道夕暮れの子守唄溶く森の色も
のはなつむひめのみことの春籠の匂いや淡し毒花もまた
ゆる坂に温泉芸者つらなりて消えゆく先の連続鳥居
前世紀なかばに証明済みのこと「ファンタとカレーはあわない」を、今
巨きさの中に虚ろが育まれすべてがのまれていくようなこと
切り口の錆びた鎖を見ています。もう十年が過ぎていたのか
終末の吐息若葉の霜となり光に消ゆるまでのたまゆら
キラキラと小鉢にゆれるもずく酢のおもいでなんてあったっけオレ
海峡を連なり渡る志願兵 父のシルエットを探しつつ
白魚の手のような魚を震う手で久しぶりならそっと掬うよ
キミが傘ボクが軸だけ選り分けてくつくつ静かな雨の日の鍋
朝露に張り替えられたる蜘蛛の巣よ 決して実行されぬ企て
輪郭が薄まっていく舟に乗り思い出せないプレゼントあげる
桜貝ひとつさざめくさみしさの単位でかぞえうらんでおくれ
バファリンと一緒に飲んだ水たちのかつて涙であった可能性
晴れる紐、雨の降る紐あるだろう 目を閉じてゆっくりと引いてみる
「どっちかっていうと晩ごはんだよね」赤信号待ちながらキミは
単線を春の過客は行くだろう明日はきっと帰るであろう
鉱物はたちまち熔けよ あかねさす玄武岩[バサルト]流る土地は怒りて
ゆるゆるとマリアナ海溝沈みゆくチョウチンアンコウの渋面を見つ
ながいこと世話になったと海に降る雨ならやがてヒトデとなりぬ
たとうればあやうい青のまなざしに囲まれ、それが蛙のようで