2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

073:谷(有櫛由之)

谷渡る鶯の音に驚きてうつつに戻る霧の白峰

072:銘(有櫛由之)

青青と鋭きままの曼珠沙華伐りて無銘の碑にぞ手向けん

071:側(有櫛由之)

初時雨 側臥の犬は立去りて空虚を黒き斑につぶす

070:しっとり(有櫛由之)

天窓の月にしつとりひとり寝のシーツ遙けき航路をうつす

069:排(有櫛由之)

発つ蝉の排出物を顔面にきらきらと浴び虹を超える子

068:沼(有櫛由之)

同じ沼持つ人でした切花の蓮の蕾にささやく嘘を

067:手帳(有櫛由之)

青き蛾の栖まふ手帳に名をひとつファム・ファタールと添へて書きにき

066:浸(有櫛由之)

だらしない女はしかも善人で蜜に浸したパンさへくれた

065:砲(有櫛由之)

夕暮に艦砲射撃空耳す浜風に足跡薄きこと

064:妖(有櫛由之)

消え残る恋とも思ふ薄月に妖しくこぼるる白萩の露

063:院(有櫛由之)

夕べは秋となに思ひけん霞みつつ島影うつる院の隠岐の海

062:ショー(有櫛由之)

あまとぶやショート鳥谷ひるがへりベンチまで二十秒の横顔