2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧
谷渡る鶯の音に驚きてうつつに戻る霧の白峰
青青と鋭きままの曼珠沙華伐りて無銘の碑にぞ手向けん
初時雨 側臥の犬は立去りて空虚を黒き斑につぶす
天窓の月にしつとりひとり寝のシーツ遙けき航路をうつす
発つ蝉の排出物を顔面にきらきらと浴び虹を超える子
同じ沼持つ人でした切花の蓮の蕾にささやく嘘を
青き蛾の栖まふ手帳に名をひとつファム・ファタールと添へて書きにき
だらしない女はしかも善人で蜜に浸したパンさへくれた
夕暮に艦砲射撃空耳す浜風に足跡薄きこと
消え残る恋とも思ふ薄月に妖しくこぼるる白萩の露
夕べは秋となに思ひけん霞みつつ島影うつる院の隠岐の海
あまとぶやショート鳥谷ひるがへりベンチまで二十秒の横顔