2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

040:跡(有櫛由之)

とほとほと霰降る夜の手習ひのこれは疵跡これはくちぐせ

039:鮭(有櫛由之)

団栗に飽きたら鮭を喰ひませう穴のことならしばし忘れて

038:華(有櫛由之)

うす曇散華の蓮の珊瑚朱に掻き傷ほどの見覚えがある

037:宴(有櫛由之)

さんざしの宴は果てて谷の陰あるいは流れあるいはよどむ

036:ふわり(有櫛由之)

をさな子の手もとのたんを離れたるポポよふはりとなか空わたれ

035:因(有櫛由之)

きさらぎのをとこと因りをもどしけり梔子にほふ五月闇の辻

034:由(有櫛由之)

あるいは声低くかすれて聞きたがふ由なき兄のアンタナナリボ

033:連絡(有櫛由之)

敗戦の連絡抱へ鳩は翔ぶ妻に金雀枝一枝くはへて

032:叩(有櫛由之)

真っ昼間アップライトを叩きつつ(You make me)feel like a natural woman[貴様の為に吾はをんなよ]

031:栗(有櫛由之)

おそろしき闇は真夏の日盛りに栗の香消え入るほどのますらを

030:噴(有櫛由之)

青とほし噴上げの風不意にして疾しあるいは洗ひ朱の兄