2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧
渓のそら龍のかたちに夕焼けて螢子売りの皺かげりたり 渓:たに
われらは夏の何の比喩はや月光のらくだの瞼ゆるやかに閉づ
こひこくとふ郷土料理を待ちわびて旧街道の鄙の家に雨
さ乱れに黝き形なす特牛ゆめの彼岸に歩み止めたり 特牛:ことひうし
今日は左手の薬指で中の強さの扇風機を止めました
岩肌の玄を湛へて真清水のたまゆら震ひ彌勒めくかも
陽あたりにせっかく咲いた芍薬を剪る六月の水の昏さよ
葩をふふみて唇を読みあつて長い名前の虫をかぞへて
療養の鯉は痛まし暮れかかる水面をはつか乱すあめんぼ
細道はきりぎしに沿ひて見送りしバスは岬を出でつ隠れつ
ゆるゆると液化してゆく鰐の背のやうにゆくりなく耀ふ比喩
草矢手に少年一騎駆けの夢前川に菜の花の黄揺る
つまり懦夫ひとりに予報されざりし雨は逸れずに降りたらむとよ
五月闇わづかに昏きほほゑみに何処より匂ふ栗花かなしき 栗花:りつくわ
おまへより大きく剥けたゆで卵の殻だ認めるだらう、おとうと
五月雨に脆弱性は兆しけり矢庭に植物図鑑伏せむ
尺蠖は伸びつつ吾は蹲みつつ五月 愁ひをうらがへしをり
さきのよの火付盗賊改が幽かに兆すますらをの眉