001:呼 この名ではもう呼ばれはしないだらうゆつくり鎖す釦式ドア 002:急 山の端はやがて明けゆく急がねばならない理由が思ひだせない 003:要 レグルスをとり戻すのに重要なものを汀に落しちやつたし 004:栄 店長の上着のあらゆるポケツトに栄螺の蓋を入…
完走しました。 今年もありがとうございました。
われらみなつたなくつなぐ文字の緒にきれぎれ光る夜を願ふも
弟月の朔夜に刻は滞り針の震へる音を聴きけり
わかくさの青葉独身寮退去期限せまれりされど益荒男
名にし負はばいざ謀らむやむらさきの草より出づる塵虫騙
賢弟愚兄愚父母愚姉妹うちそろひ雨中に紅葉見てしをとつひ
三申の言はざる日こそ哀しけれ戦後戦前縄のごとしも
地下茎はあるといふね隣人の光合成に空腹は満つ
鄙の湯にわざわざバスを乗り継いでその日に帰るやうな恋だな
うろくづに怒りの徴ちりつどふ 寧ろ悲しみこそわれに降れ
計略のラガーマンこそ愛しけれあした木枯らし鬢にぞ吹く
苦々しく胡桃噛みつつ仇敵の忌にぞ山茶花は咲き初めけむ
逢ひたしと言へば世界は傾いてブックマークの紅葉落ちけむ
月の夜に温みゆく炭酸水やバー・パンサラッサの某暇日
ラグビーの貴奴当千にして巻き毛しばしば翳る愁ひとは沖
月光の擬宝珠を撫づ智慧熱の子の青黒き眼を畏れつつ
翼あるものの化石の冷えゆくに秋うれひこそひとを殺むれ
ユニフォーム少女の群は声高くゆがみ錦の川ぞ流るる
憎しみもやがては土へかへること山杜鵑草つゆをたたへつ
佳月涼風あらずとも来よ雨の音の土にしみゆくほどに酔はむよ
老犬の仔犬の頃を思ひ出づ はた付けざりし名を思ひ出づ
紫の葡萄啄む唇のまま標野迷ひてきみこふる歌
さはれなほ筆跡をまねつつ惑ふわが純情をはげしくほふれ
小鳥には鳥用の神しづか夜にふつふつ煮込む木苺のソース
しらしらと此の世に浮かぶやはらかき歌よわれらに降れよ等しく
キリン舎の高窓越しにゆふべ見し夢のはなしを語りあふべし
あさがほの短日植物てふ性をはつか愛せり宿酔の午
食卓に唾で描きつつ哀しめり如何なる星座にも行けぬこと
物部はもののふの謂ひ海月為す宴会場を彷徨ふ給仕