題詠ブログ2015 まとめ

001:呼 この名ではもう呼ばれはしないだらうゆつくり鎖す釦式ドア 002:急 山の端はやがて明けゆく急がねばならない理由が思ひだせない 003:要 レグルスをとり戻すのに重要なものを汀に落しちやつたし 004:栄 店長の上着のあらゆるポケツトに栄螺の蓋を入…

完走報告(有櫛由之)

完走しました。 今年もありがとうございました。

100:願(有櫛由之)

われらみなつたなくつなぐ文字の緒にきれぎれ光る夜を願ふも

099:聴(有櫛由之)

弟月の朔夜に刻は滞り針の震へる音を聴きけり

098:独(有櫛由之)

わかくさの青葉独身寮退去期限せまれりされど益荒男

097:騙(有櫛由之)

名にし負はばいざ謀らむやむらさきの草より出づる塵虫騙

096:賢(有櫛由之)

賢弟愚兄愚父母愚姉妹うちそろひ雨中に紅葉見てしをとつひ

095:申(有櫛由之)

三申の言はざる日こそ哀しけれ戦後戦前縄のごとしも

094:腹(有櫛由之)

地下茎はあるといふね隣人の光合成に空腹は満つ

093:わざわざ(有櫛由之)

鄙の湯にわざわざバスを乗り継いでその日に帰るやうな恋だな

092:徴(有櫛由之)

うろくづに怒りの徴ちりつどふ 寧ろ悲しみこそわれに降れ

091:略(有櫛由之)

計略のラガーマンこそ愛しけれあした木枯らし鬢にぞ吹く

090:山(有櫛由之)

苦々しく胡桃噛みつつ仇敵の忌にぞ山茶花は咲き初めけむ

089:マーク(有櫛由之)

逢ひたしと言へば世界は傾いてブックマークの紅葉落ちけむ

088:炭(有櫛由之)

月の夜に温みゆく炭酸水やバー・パンサラッサの某暇日

087:当(有櫛由之)

ラグビーの貴奴当千にして巻き毛しばしば翳る愁ひとは沖

086:珠(有櫛由之)

月光の擬宝珠を撫づ智慧熱の子の青黒き眼を畏れつつ

085:化石(有櫛由之)

翼あるものの化石の冷えゆくに秋うれひこそひとを殺むれ

084:錦(有櫛由之)

ユニフォーム少女の群は声高くゆがみ錦の川ぞ流るる

083:憎(有櫛由之)

憎しみもやがては土へかへること山杜鵑草つゆをたたへつ

082:佳(有櫛由之)

佳月涼風あらずとも来よ雨の音の土にしみゆくほどに酔はむよ

081:付(有櫛由之)

老犬の仔犬の頃を思ひ出づ はた付けざりし名を思ひ出づ

080:標(有櫛由之)

紫の葡萄啄む唇のまま標野迷ひてきみこふる歌

079:筆(有櫛由之)

さはれなほ筆跡をまねつつ惑ふわが純情をはげしくほふれ

078:ソース(有櫛由之)

小鳥には鳥用の神しづか夜にふつふつ煮込む木苺のソース

077:等(有櫛由之)

しらしらと此の世に浮かぶやはらかき歌よわれらに降れよ等しく

076:舎(有櫛由之)

キリン舎の高窓越しにゆふべ見し夢のはなしを語りあふべし

075:短(有櫛由之)

あさがほの短日植物てふ性をはつか愛せり宿酔の午

074:唾(有櫛由之)

食卓に唾で描きつつ哀しめり如何なる星座にも行けぬこと

073:会場(有櫛由之)

物部はもののふの謂ひ海月為す宴会場を彷徨ふ給仕