2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧
托卵の鳥の心のはしきやし北アルプスに甲高き声
花びらの列は蟻へと繋がりて折りたたまれて穴にしまはる
ポワンカレつづきの予想つぎつぎとはずれはずれて 束の間の雪
喋らない鵥(かけす)あるいは告解は真昼の巻積雲に溶くらむ
日本に百万回の猫のをり一度だけ木蓮として散りしも
カラダにはまだ慣れなくて。草の音で ものがたり、とくちびるに漏る
上甲板に若き気象観測士は一本の燭、三時「遠雷」
カステラを知らない国に伝へたい そのくにの子をいつくしみたい
甘い針にわづか誇りを柔らかい触角に蜂、滴る愛を
古書店に潜む銃身黝黝として原色硬骨魚類図鑑
焦がれゐし少年イエスに逢ふもかなはず春ひさぐひとのやさしさ
春蝶の蛹を背負うとが人のなにも恨まぬ蒼き眸は澄む
山姥のかたりはやまず夕づつのあかりも少しすぎたる夜寒
ことだまよ あるいは蘆原(あはら)の青鷺よ 後悔さへも追風の小夜
カメリアの蘂にまびれてをとめごは緋の勢ひに越ゆる、何橋?
大腿に退廃兆す初夏の飛沫したたる鉄と火と血と
春雷の後の尖晶石の日も猛毒は何処に潜まむや
長楕円軌道ははずれ行先を失くした朝にはつか鳴るテレフォン
波際に黄色い財布照らされつ しあはせなどは入つてをらねど
なつかしい目をした魚に告げられて南へ逃げる兄と妹
白骨の色のあかりが幾重にも降りしく夜にひとは黙する
パブリックコメントを告ぐる歌声の霞みて淡く天使めきたる
ひさかたの月夜に醒めしおとひとは初期設定の睛もて笑まひぬ