2014-01-01から1年間の記事一覧
青青と鋭きままの曼珠沙華伐りて無銘の碑にぞ手向けん
初時雨 側臥の犬は立去りて空虚を黒き斑につぶす
天窓の月にしつとりひとり寝のシーツ遙けき航路をうつす
発つ蝉の排出物を顔面にきらきらと浴び虹を超える子
同じ沼持つ人でした切花の蓮の蕾にささやく嘘を
青き蛾の栖まふ手帳に名をひとつファム・ファタールと添へて書きにき
だらしない女はしかも善人で蜜に浸したパンさへくれた
夕暮に艦砲射撃空耳す浜風に足跡薄きこと
消え残る恋とも思ふ薄月に妖しくこぼるる白萩の露
夕べは秋となに思ひけん霞みつつ島影うつる院の隠岐の海
あまとぶやショート鳥谷ひるがへりベンチまで二十秒の横顔
中埠頭穀物倉庫の鳩たちに囲まれたのが夏の思ひ出
人らみな懲らしめられよたちまちの月光よわが悪意曝せよ
ひさかたの雨歌に声かすれつつ胡瓜畑を歩く嘴細
少年の惨酷物語に鳥よ迷ひこむなよ赤い眸で
日本に佐賀県のあり滋賀県もあるといふことやまとに思ふも
死ねば泣く人なかぬひとより分けて余白をうめてさみしくなりぬ
のどぼとけさぐる指先第七藝術劇場のエレベーターはゆるゆる降りる (第七藝術劇場:ななげい)
油照り片陰深い参道の滂沱の僧に見覚えがある
蒔きしまま忘れてをりし韓藍に指を焼かれつ 妹のおもかげ
戒は純白にひそみ無垢ならぬたましひ百日紅に弾けつ
たいせつは忘れちゃったよ若草の野に靴下を脱いで踏み入る
かりょーびんかりょーびん頻降る嘘のさんざさざめく木洩れ日を浴ぶ
青鷺が二羽飛んでゆく 恋だらう岬から見る波がうるさい
淡路島モンキーセンター頂に漢[をとこ]あり選挙に拠らずも猛し
心持ち涙みだるる緑川流れなづみてときはへにけり
白南風は山を渡りて筒鳥のとぼけた賛歌淡く谺す (白南風:しらはえ)
あたますきとほり死にたる桑の子を小さき手もて葬る春の夜 (葬る:はふる)
春凪の油の海は発光す世をたがへゆく船を惜しみて
アリタリヤフールプルーフ・ルール午後およそ止まった機影に見入る