2014-01-01から1年間の記事一覧

072:銘(有櫛由之)

青青と鋭きままの曼珠沙華伐りて無銘の碑にぞ手向けん

071:側(有櫛由之)

初時雨 側臥の犬は立去りて空虚を黒き斑につぶす

070:しっとり(有櫛由之)

天窓の月にしつとりひとり寝のシーツ遙けき航路をうつす

069:排(有櫛由之)

発つ蝉の排出物を顔面にきらきらと浴び虹を超える子

068:沼(有櫛由之)

同じ沼持つ人でした切花の蓮の蕾にささやく嘘を

067:手帳(有櫛由之)

青き蛾の栖まふ手帳に名をひとつファム・ファタールと添へて書きにき

066:浸(有櫛由之)

だらしない女はしかも善人で蜜に浸したパンさへくれた

065:砲(有櫛由之)

夕暮に艦砲射撃空耳す浜風に足跡薄きこと

064:妖(有櫛由之)

消え残る恋とも思ふ薄月に妖しくこぼるる白萩の露

063:院(有櫛由之)

夕べは秋となに思ひけん霞みつつ島影うつる院の隠岐の海

062:ショー(有櫛由之)

あまとぶやショート鳥谷ひるがへりベンチまで二十秒の横顔

061:倉(有櫛由之)

中埠頭穀物倉庫の鳩たちに囲まれたのが夏の思ひ出

060:懲(有櫛由之)

人らみな懲らしめられよたちまちの月光よわが悪意曝せよ

059:畑(有櫛由之)

ひさかたの雨歌に声かすれつつ胡瓜畑を歩く嘴細

058:惨(有櫛由之)

少年の惨酷物語に鳥よ迷ひこむなよ赤い眸で

057:県(有櫛由之)

日本に佐賀県のあり滋賀県もあるといふことやまとに思ふも

056:余(有櫛由之)

死ねば泣く人なかぬひとより分けて余白をうめてさみしくなりぬ

055:芸術(有櫛由之)

のどぼとけさぐる指先第七藝術劇場のエレベーターはゆるゆる降りる (第七藝術劇場:ななげい)

054:照(有櫛由之)

油照り片陰深い参道の滂沱の僧に見覚えがある

053:藍(有櫛由之)

蒔きしまま忘れてをりし韓藍に指を焼かれつ 妹のおもかげ

052:戒(有櫛由之)

戒は純白にひそみ無垢ならぬたましひ百日紅に弾けつ

051:たいせつ(有櫛由之)

たいせつは忘れちゃったよ若草の野に靴下を脱いで踏み入る

050:頻(有櫛由之)

かりょーびんかりょーびん頻降る嘘のさんざさざめく木洩れ日を浴ぶ

049:岬(有櫛由之)

青鷺が二羽飛んでゆく 恋だらう岬から見る波がうるさい

048:センター(有櫛由之)

淡路島モンキーセンター頂に漢[をとこ]あり選挙に拠らずも猛し

047:持(有櫛由之)

心持ち涙みだるる緑川流れなづみてときはへにけり

046:賛(有櫛由之)

白南風は山を渡りて筒鳥のとぼけた賛歌淡く谺す (白南風:しらはえ)

045:桑(有櫛由之)

あたますきとほり死にたる桑の子を小さき手もて葬る春の夜 (葬る:はふる)

044:発(有櫛由之)

春凪の油の海は発光す世をたがへゆく船を惜しみて

043:ヤフー(有櫛由之)

アリタリヤフールプルーフ・ルール午後およそ止まった機影に見入る