さ乱れに黝き形なす特牛ゆめの彼岸に歩み止めたり 特牛:ことひうし
今日は左手の薬指で中の強さの扇風機を止めました
岩肌の玄を湛へて真清水のたまゆら震ひ彌勒めくかも
陽あたりにせっかく咲いた芍薬を剪る六月の水の昏さよ
葩をふふみて唇を読みあつて長い名前の虫をかぞへて
療養の鯉は痛まし暮れかかる水面をはつか乱すあめんぼ
細道はきりぎしに沿ひて見送りしバスは岬を出でつ隠れつ
ゆるゆると液化してゆく鰐の背のやうにゆくりなく耀ふ比喩
草矢手に少年一騎駆けの夢前川に菜の花の黄揺る
つまり懦夫ひとりに予報されざりし雨は逸れずに降りたらむとよ
五月闇わづかに昏きほほゑみに何処より匂ふ栗花かなしき 栗花:りつくわ
おまへより大きく剥けたゆで卵の殻だ認めるだらう、おとうと
五月雨に脆弱性は兆しけり矢庭に植物図鑑伏せむ
尺蠖は伸びつつ吾は蹲みつつ五月 愁ひをうらがへしをり
さきのよの火付盗賊改が幽かに兆すますらをの眉
デタントもスローダウンの初夏の熟寝の間にも梅は熟れつつ 熟寝:うまい
碕といふ土地に生まれて汝が髪の先はかすかに湿りてゐたり
春旱 船出の澪の細細にさらさら崩ゆる果てし思ほゆ 細細:ほそほそ
瓶詰となり鮮らけし酢のすみれ真青なるものをのこを殺む
円柱形(エンチューケー!)と歌ひつつ新神戸トンネルにのまれる
沖つ辺の砕波の白を縫ふ如く風遊びする鷗いとしも
をさな子の小さき爪のさくらばな風は散らすよ風よ散らすな
白亜紀やジュラ紀に栄え滅びたが子供たちには人気が残る
足裏に刃のある靴を装着し氷上を滑る野蛮な行為
火事を消すための自動車。救急車、ショベルと並び子供に人気
行先を教へてくれる車載機器。画面に見入ることは避けたい
大荒れの天気となるが中心は無風。無性に張り切る人も
八兵衛ほか二名を連れて旅をしたと云はれているが史実ではない
ここでない何処かの事。「込み入つた話はどうか――でしてくれ」
毎朝夕刊行されてをり記事は事実であるとみなされてゐる