088:炭(有櫛由之)
月の夜に温みゆく炭酸水やバー・パンサラッサの某暇日
087:当(有櫛由之)
ラグビーの貴奴当千にして巻き毛しばしば翳る愁ひとは沖
086:珠(有櫛由之)
月光の擬宝珠を撫づ智慧熱の子の青黒き眼を畏れつつ
085:化石(有櫛由之)
翼あるものの化石の冷えゆくに秋うれひこそひとを殺むれ
084:錦(有櫛由之)
ユニフォーム少女の群は声高くゆがみ錦の川ぞ流るる
083:憎(有櫛由之)
憎しみもやがては土へかへること山杜鵑草つゆをたたへつ
082:佳(有櫛由之)
佳月涼風あらずとも来よ雨の音の土にしみゆくほどに酔はむよ